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自己満足の詩集ブログです(=゜ω゜)ノ livedoorからのお引っ越しwww 基本ダークな詩が中心です(=゜ω゜)ノ たまに短編やら掌編やら小説も書きますm(__)m      最初に★入城案内★を読んでくれると嬉しいでつ(=゜ω゜)ノ
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自宅警備員
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無関心
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詩を唄います。
不思議な不思議なお話をご用意しています。
醜い醜い詩をご用意しています。
闇へとご案内致します。素敵な夢を見れるでしょう。
・・・多分ね。
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ある処に小さな町がありました。
町の中には女性ばかり。
女性しか住んでいない町でした。

ある日一人の男が、女性ばかりの町に足を踏み入れました。
すると男は町の女性達から、石を投げつけられ、罵声を浴びせられました。
男は慌てて町から逃げ出します。

ある別の日も、別の男性が町に足を踏み入れました。
すると今度は、女性達からは歓迎をされ、ご馳走を振舞われました。

何故最初の男性と、こんなにも対応が違うのでしょうか?

不思議に思った町に住む少女は、母親に訪ねてみたした。
すると母親は笑顔で答えます。
美しくなかったからよ。
と・・・。
少女は更に尋ねました。
何故美しくなければならないのかと。
すると母親は、また笑顔で答えました。
美しさが全てだからよ。
と・・・。

町を見渡してみると、どの女性も美しい者ばかり。
それは外から来る美しい男性ばかりを、迎え入れていたからです。
そしてそれは、逆に美しい女性ばかりが住む町を目当てに訪れる男性も多いと言う事。

男性も女性も、美しさを求めてこの町に集まります。
本当に、美しさが全てなのでしょうか?

子を生した女性は、皆夫であるはずの男性を後に町から追い出していました。

そこは女性だけの園。
美しい女性ばかりが集まる、残酷な園のお話。

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透明にも近い澄んだ水の色は、微かに水色をしていた
その色はとても美しく
とても透き通り

あの人の髪の色と同じ色をしていた

あの人の髪の色も又、澄んだ透明の様な色だが
微かに水色をしていた

とても美しく
とても儚げで
触れれば消えてしまいそうな程だった

何故あんなにも透き通った水色の髪をしていたのだろうか
それはあの人が人ではなかったからだろうか
それはあの人自体が、水から産まれて来たのか・・・又は水で出来ていたからだろうか

髪の色と同じ色の湖の中に佇む姿は
とても儚げで
とても切なく
触れれば壊れてしまいそうだった

もう一目会いたい
そう願い再び訪れた、名も無き湖

だがそこにあの人の姿は無かった・・・

厭きれるくらい通った
名も無き湖に
幾度となく季節を越え
幾度となく月日を越え
呆れる程に通った

それでも今一度会えないと言う事は、やはりあの時見たモノは幻だったのだろうか
それとも自身が求め、生み出した理想の幻覚だったのだろうか

だが確かにこの目に焼き付いている
透き通る様な水色の髪のあの人は
こちらを見て微笑んだのだ

まるでこの世を去る前に
誰かに会えた事が嬉しかったかの如く

それ程までにあの人の笑顔は・・・
瞳はとても穏やかだった

ならばあの人の最後を看取ったのは、自分だと言うことになるのだろうか

何とも皮肉で悲しいのだろう

水色の髪をしたあの人は、最後に自分に看取られ安らかに逝けたが
自分が始めてあの人に会った時は、あの人が絶つ時だったのだから・・・

願えど願えど
再び会える日等来ないと言う事だ

待てども待てども・・・

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女の子は如何?可愛い女の子を買いませんか?可愛い男の子も居ますよ。

雪の中、寒い冬の風に吹かれながら、一人の少女が街行く人々に声を掛けます。

女の子は如何?男の子も居ますよ。

真っ白な息を吐きながら、行き交う男性、女性問わずに声を掛ける少女。
そんな少女の元に、一人の女性が近づき、尋ねて来ました。

女の子と男の子、何に使ってもいいのかしら?

少女は笑顔で答えます。

えぇ、好きな様に使って貰って構わないわ。儀式の材料にするもよし、バラして臓器を売るもよし、観賞用として使うもよし、お客様のお好きな様に、どうぞ使って下さいな。

すると女性は、小さなバックの中からサイフを取り出しました。

一人お幾らかしら?

少女は嬉しそうに答えます。

物によって違いますが、質の良い物だと少し値が張りますよ。

構わないわ。商品を見せて頂けるかしら?

女性がそう言うと、少女は笑顔で頷きました。
そして女性を、商品が置いて場所へと案内をします。

商品は街から少し外れた所に建っている、建物の地下に在ると少女は言いました。
女性は少女に案内をされ、建物へと到着をすると、そのまま建物の中へと入って行きました。
建物は少し古びてはいましたが、それなりに小奇麗でした。
少女に案内をされるがまま、地下へと進んで行きます。

この先の檻の中に、沢山の商品が有ります。どうぞ好きな子を選んで下さい。

女性は少女に言われた通り、地下の奥へと進んで行きました。

少女は女性の背中を見送ると、建物の外へと出ます。
外へ出ると、早速人通りの多い場所へと行き、再び街行く人々に声を掛けました。

女の子は如何?可愛い女の子を買いませんか?可愛い男の子も居ますよ。

すると今度は、一人の男性が少女に近づきました。

どんな子が居るのかね?

男性の質問に、少女は笑顔で答えます。

色んなタイプの子が居ますよ。どうぞよければご覧下さい。案内をします。

少女は男性を、あの建物へと案内しました。


しばらくすると、また少女は戻って来ます。
しかし、建物の中へと入った女性も男性も、戻っては来ません。
少女はまた笑顔で、街行く人々に声を掛けました。

女の子は如何?可愛い女の子を買いませんか?可愛い男の子も居ますよ。

雪の降る街中に、少女の声が響きます。
その声に吸い寄せられて来る、大人達。

少女に案内をされ、建物の中へと入っていった大人達は、誰一人戻っては来ませんでした。
只、少女の声に耳を傾けた大人達は、皆高価な物を身に付けたお金持ちばかりだったそうです。

それは欲深い大人と、欲深い子供達のお話でした。


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夢の中へと連れてって。永遠に目覚めない、夢の中へと・・・。

少女は願いました。
毎日夜が訪れる度に、願い続けました。
もう一度会いたい・・・。
ただもう一度、夢の中で出会ったあの人に会いたくて。
願い続けます。

それはそれは素敵な夢でした。
沢山の笑顔に囲まれ、夢の中だと言うのに全ての感覚が有るのです。
食べ物を食べれば『美味しい』と感じ。
傷を負えば『痛い』と感じる。
頬に触れられれば、温もりを感じました。

素敵な素敵な夢の中。
その中で出会った、一人の少年。
優しい笑顔に、柔らかい声。
温かい温もりで少女の体を包みました。

少女はその時始めて感じました。
現実でも感じた事の無い感覚・・・。
『幸せ』と言う感覚。

少年は一輪の薔薇をプレゼントしてくれました。

この薔薇の花が、僕達をまた廻り合せてくれる。忘れないで、僕は必ず君にまた会いに来ると言う事を・・・。

そう言い残し、少年は夢の中から姿を消してしまいました。

あれから何度も夢を見ます。
しかしどの夢の中にも、あの少年の姿は見当たりません。

もう一度・・・もう一度あの夢を・・・。

少女は願い続けました。
夜が訪れる度に、願いました。
強く・・・強く・・・。

病院のベッドの上で。
チュウブに繋がれ、何の味もしない食事をしながら。

ベッドの上の少女は、何も感じる事が出来ませんでした。
痛みも、喜びも、悲しみも、憎しみも・・・そして温もりさえも。
何も感じません。
ただ管に繋がれ生きているだけの少女。

少女は長い長い眠りの中で、朝と夜を幾度となく繰返しています。
そんな中時折見る夢の中で出会った少年。

彼はどこに居るの?薔薇はどこへ行ってしまったの?

少女は沢山の夢の中で手さぐりに捜し続けます。
少年から貰った一輪の薔薇を・・・。
もう一度彼に会う為に。


ある朝少女は目を覚ましました。
それは夢の中では無く、病室のベッドの上で。
ゆっくりと鎖され続けた瞳を開きました。

眩しい光が差し込みます。
キラキラと輝く窓ガラス。
温かい日差し。
その傍らに咲く、一輪の薔薇。

なんだ・・・こんな所に有ったのね・・・。

少女は少年から貰った一輪の薔薇をようやく見付けました。
花瓶の中に入れられた、たった一輪の薔薇の花。

これで少年にまた会える、少女はそう思い、嬉しそうに微かに微笑みました。
しかし夢の中の生活が長すぎた少女は、そのまま永遠の眠りへとついてしまいました。

ああ・・・私を連れて行ってくのね・・・。永遠に目覚めない・・・夢の中へと・・・。

少女は静かに、息をヒキトリマシタ。
その瞬間に、約束通りあの少年に出会う事が出来ました。

約束通り会いに来たよ。

少年は少女の手を取り、優しく微笑んでいました。

安らかに・・・とても安らかに眠る少女。

少年は天使だったのでしょうか?
それとも・・・死神だったのでしょうか?

ただ一輪だけ咲く薔薇の花弁の色は、黒かった・・・。

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アナタは信じますか?この物語を・・・。それとも信じない?どちらでも構わない・・・。だってこれは、僕が作ったお話だから。

ある処に一人の女が居た。ある処に一人の男が居た。老人も居れば子供も居る。成人も居れば男も女も居る。沢山の人間が居る。だけど各々が居る場所は別々 の所。それぞれが違う場所に居る。
一人は緑溢れる森林の中に。一人は真っ赤に咲き乱れる薔薇園の中に。一人は灰色に染まる洞窟の中に。一人は青く広がる海の中に。時には月の上に、あるい は見た事も無い宮殿の中に。

全ての者が同じとは言えない場所に、全ての場所に同じ物が存在をしていた。
それはどこにでも在り、誰の場所にも必ず存在している。一つの巨大な氷。

氷の中には自分が居た。それぞれの場所に居る、氷漬けにされた自分。もう一人の自分。
しかしその姿は今居る自分とは異なる者だった。氷の中の自分の姿は、全く異様な者ばかりだった。

ある者には黒い羽根が生えており、ある者には蛇の様な体をしている。別の者は岩の様な皮膚を纏っており、また別の者は下半身が魚になっていた。巨大で あったり、小人であったり、羽が有れば角が生えている者も居る。
それらは全て人間とは呼べる品では無かった。しかし紛れも無く自分と同じ顔をしている。これは紛れも無く自分なのだと、誰もが察する。

「触れてみようか?」

ある者はそう思い、氷に触れる。

「恐ろしい・・・。」

ある者はそう思い、氷から離れる。

これにより分岐が出来上がる。氷に触れた者と、氷に触れなかった者。

ここは夢の中。夢の中で訪れたそれぞれの場所。全ての人間が見る事の出来る夢ではなく、何か大切な物を探している者だけが見る事の出来る夢。心に霧の 掛った者が辿り着ける自分だけの場所。
幸運にも自分の場所に辿り着けた者達。そして彼等に与えられた選択。氷を『触れる』か『触れない』か。氷の中のもう一人の自分を『認める』か『認めな い』か・・・。

夢を見た者が目を覚ますと、そこに分岐が現れた。

『氷を触れなかった者』はいつもと変わらぬ日常へと戻って行った。大切な物は見付からぬまま、心の中には霧が掛かったまま平凡な日々を過ごして行く。

『氷を触れた者』は変化が起こった。氷の中に居たもう一人の自分が、今の自分の中へと入っていた。夢の中から連れて来てしまったのだ。鏡の中にはもう一 人の自分の姿が映る。その姿は美しい者も有れば、醜い者も。
しかし心の中に掛っていた霧は、綺麗に晴れ渡っていた。とても清々しい気持ちになっていた。探していた物が何だったのか、分かった様な気がし、見つけた 様に思えた。

それは記憶だった。もう一人の自分の記憶・・・。

それから日常が日常で無くなり、生活の全てが変わった。以前よりも幸せに感じる者も居れば、以前に増し不幸に感じる者も居た。しかし『死』を恐れる事が 無くなった。『生』を感謝する事も無くなった。ただ『今』を大切に感じる様になった。

彼等が見た氷の中の自分は、何だったのだろうか?隠し続けていた心?認める事の出来なかった思い、歪み、又は願望。それぞれが様々な見解をし、考え る。しかし僕はこう答えよう。氷の中に居た自分と同じ顔をした者は、それは彼等の前世だったんだよ。氷に触れた者は前世の記憶を取り戻した。だから日常も 変わってしまったんだ。触れなかった者は変化を拒んだ。変わり映えの無い日常を選んだんだろう。でもこれは夢の中のお話であり、夢から覚めたと思い込んで いるだけかもしれない。まだ夢は続いていて、彼等はまだあの氷の前に居るのかもしれない。ならばどこからが現実?それを決めるのも彼等だろう。触れた後 か・・・触れる前か・・・。

だって、夢の続きは好きなだけ自分で作る事が出来るんだから・・・。


アナタが夢の中で氷漬けになった自分を見付けたら、触れてみる?それとも触れたりはしない?

どちらが幸せになれるだろうか・・・。

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一人の少女が居ました。
少女はいつも小さな部屋の中に居ます。
外へ出る事もなく、誰かを招き入れる事もなく、毎日を一人部屋の中で過ごしていました。

部屋の中には沢山のぬいぐるみとお人形がありました。
沢山の本と、沢山の絵本。
ローズの香りが漂い、カーテンも家具も全てピンク色。
それから沢山のオルゴール。
メリーゴーランドの形をした物、天使の形をした物、木箱で出来た物、様々な形をしたオルゴール。
全て彼女の宝物です。
部屋の中には彼女の大好きな物で、溢れていました。
この部屋は彼女のお城。
彼女にとってお城でした。

少女はこのお城で、王子様が迎えに来てくれるのを、待ち続けていました。

沢山読んだ物語。
その中には、いつも王子様がお姫様を助けに来てくれます。
『王子様』と書かれていなくても、男の人が女の人を助け、守り、迎えに来てくれていました。
少女は思いました。

「女の子は皆お姫様。男の子は皆王子様。誰にでも必ず、王子様が迎えに来てくれる。」

そして少女は待ち続ける事にしました。

「私の所にも王子様が迎えに来てくれる。」

一つ夜を越えては、朝を迎え。
また夜を越えて・・・。

しかし、待てども待てども王子様は来てはくれませんでした。
少女は考えました。

「どうしてこんなにも待っているのに、迎えに来てはくれないんだろう?」

そして沢山ある本の中から、一番好きなお話の書かれた童話を一冊開きました。
もう一度本に書かれたお話を読み返してみます。
するとそこには、危険の迫ったお姫様の所に、王子様が助けに現れる場面が書かれていました。
少女は思いました。

「あぁ・・・危険が身に迫れば助けに来てくれるのね。今の私には何の危険もないから、来てくれないのね。」

少女はナイフを手に取り、腕をナイフで切り刻んでみました。
チリチリと痛みが体中に走り、腕からは真っ赤な血が溢れ出てきます。
ピンク色の床にポタポタと零れ落ちる血は、床に赤い薔薇を沢山咲かせました。

「痛い・・・痛い・・・。助けて王子様・・・。」

ポロポロと涙を流しながら、少女は王子様に助けを求めました。
しかしいつまで経っても王子様は助けに来てはくれません。
血塗れの腕と床を、涙を流し見つめる少女。
少女はまた思いました。

「自分で傷付けても、危険ではないから来てくれないんだ・・・。」

少女は傷の手当てを自分でし始めました。
クルクルと腕に白い包帯を巻き付け、血塗れになった床を綺麗に拭こうとします。

「赤色も・・・綺麗・・・。」

次の日の朝。
少女は部屋中ピンク色だったカーテンや家具、全てを赤色の物へと変えました。

「やっぱり赤色の方が綺麗。」

少女は嬉しそうに、カーテンを閉じては開いてと遊びます。
またカーテンを開けた時、ふと窓の外に目をやりました。
外には手を繋いで仲良く歩く、男女の姿が目に映りました。

「あの子は王子様が迎えに来てくれたんだ。」

少女は手を繋ぐ女性を、羨ましそうに見つめていました。
その女性がとても羨ましく、妬ましく、憎らしく、恨めしく思いました。

シャッとカーテンを一気に閉めると、手元にあったぬいぐるみの首を、ハサミで切り落としました。
少女は嬉しそうに笑います。


~♪キラキラ綺麗なお星様~
こっちへおいで♪あっちへお行き♪
一番輝くお星様♪こっちへオイデ
残るは醜いお星様♪あっちへお逝き
クルクルリボンを巻き付けて~
私に捧げて綺麗な指輪♪~


星空を見上げながら、楽しそうに歌う少女。
王子様が迎えに来てくれる事が、待ち遠しくてたまりませんでした。
色々な事を想像しました。
どこから入って来るのか、どうやって現れるのか、どの様に登場するのか。
そして一番初めに言ってくれる言葉は何だろうか。

「きっと遅れてごめんね・・・かな?」

少女は嬉しそうに笑います。

「それとも待たせてごめんね?」

少女はまた嬉しそうに笑います。
しかし、ずーっとずーっと星空を見つめていると、何故か心は段々と寂しくなってきました。
とても寂しく、とても不安になってきました。

「本当に・・・来てくれるのだろうか・・・。」

少女は初めて、『来ないかもしれない』と言う不安に襲われました。
一つの不安は、無数の不安を生みだします。
『来ないかもしれない』『来てくれないかもしれない』『見つけてくれないかもしれない』『気付いてはくれないかもしれない』
無数の小さな不安は、一つの大きな不安へと生まれ変わりました。

「私の所には来ない・・・。」

少女は手を繋いで歩いていた男女の事を、思い出しました。

「あの子の所には来たのに、私の所には来ない・・・。」

そして部屋にある沢山の本を、棚から全部取り出すと、床に広げて何冊もの本のページをパラパラと開きました。

「このお話では迎えに来ている。このお話でも助けに来ている。このお話も・・・このお話も・・・どのお話でも、どの子にも・・・。お話の中以外の子の所に も!!」

少女は本のページをビリビリと破り始めました。
全て王子様が登場しているシーンばかりを。

「ここにも!ここにも!!ここにも!!!ここにも!!!!王子様は迎えに来ている!!!!」

気付けば部屋中、破り捨てた本のページが散乱していました。
部屋中に舞い散る紙の中で、少女は泣きながら叫びました。

「どうして!!どうして私の所には来てくれないの!!!!」

そして床に広げた本を、壁に向かって投げつけました。
何度も何度も投げつけ、何冊も何冊も投げつけて。
部屋に飾られていたオルゴールに当たると、オルゴールはメロディーを奏でながら、床へと落ちて行きます。
床に落ちても鳴り続けるメロディー。
少女はその音に、笑われている様に感じました。

「物の癖に・・・。」

落ちたオルゴールを拾い上げると、何度も何度も床に叩き付けました。
その度にまた音が鳴ります。
ようやく音がしなくなった頃には、オルゴールはバラバラになり、壊れてしまっていました。

「物の癖に・・・笑うから・・・。」

少女は砕けた破片を手にすると、尖った先をじっと見つめます。
そして思いました。

「来てくれないのなら・・・なればいい。私が王子様になればいい。」

手にした破片を強く握りしめると、掌からはポタポタと赤い血が滴り落ちました。


少女は長い黒髪を、ハサミでバッサリと短く切り落としました。
そして男物の洋服に着替えると、部屋から外へと出て行きます。
ずっと籠りきっていたお城。
彼女はお城の中にある物全てを、お城ごと捨てる様に外へと飛び立って行きました。

「王子様にはお姫様が必要。王子様はお姫様を待っていたりはしない。迎えに行くの。だから僕が迎えに行くんだ。」

そうして少女は少年になり、街へと向かいました。
お姫様を探しに街中を歩き回る少年。
しかし周りを見渡しても、どこにも少年のお姫様らしき姿は見当たりません。
少年は思いました。

「お姫様を探すのは、難しいんだ・・・。」

それでも諦めずに、自分だけのお姫様を探し続けました。
右を向いて左を向いて。
前を向いて後ろを向いて。
上を見て下を見て。
探し続けます。
そうしている内に、少年はある事に気付きました。

「こんな街中にお姫様がいるはずがない・・・。ここにいるのは、汚れた夢を飼っている魔女ばかりだ・・・。」

少年は街を後にし、今度は静かな町へと向かいます。
しかしそこでも一向に見付かる気配はなく、いつの間にか日は沈み、空は暗闇に包まれていました。
夜空を見上げた少年は、キラキラと輝く一番星を見つけました。

「君はお姫様?」

一番星に向かって問い掛ける少年。
しかし星は何も答えてはくれません。
少年は星を見つめながら歩き始めました。
一番星をめざす様に歩き続けます。
しかし進めば進む程、星はどんどん遠ざかって行く様に感じました。

「どうして逃げるの?」

追いかける様に歩き続ける少年。
気付けば周りは暗闇に包まれ、いつの間にか星も消えてしまっていました。
少しの街灯の光。
その光の中に浮かぶ沢山の石。
少年は周りを見渡しました。

「お墓が沢山・・・いつの間にこんな所に来てしまったんだろう・・・。」

気付けばお墓に囲まれていた少年は、足元に咲く一輪の赤い薔薇を見つけました。
少年はその薔薇を拾い上げると、また周りを見渡します。
すると同じ赤い薔薇が沢山供えられた、一石のお墓を見つけました。

「あの人は、赤い薔薇が好きだったんだ。」

赤い薔薇の咲くお墓に近づくと、少年は手にした一輪の薔薇をそっと添えました。
街灯の微かな光に照らされる、墓の主の名前。
石に刻まれた文字。
それは少年の知る名前。

「あぁ・・・そうか・・・。」

少年は刻まれた名前を指で優しく撫でると、涙を流しました。

「だから私の王子様は、どんなに待っても迎えには来てくれなかったのね・・・。」

少女はポロポロと涙を流しながら、その場を後にまた街へと向かいました。


街へと戻った少女は、街の中で一番高い建物の屋上に行きました。
お墓から持って来た一輪の赤い薔薇を手にして。

「待っているばかりじゃダメなんだ。私が王子様の所に会いに行かなくちゃ・・・。」

「僕は王子様でもあるんだ。だからお姫様の元へと行かなくちゃ・・・。」

今度は夜空を見上げず、街を見下ろしました。
沢山の街灯がキラキラと光輝いています。

「こっちの星も綺麗・・・。」

そして少女は、下に輝く星の中へとー自分を投げ捨てました。

「なんだ・・・最初からこうすればよかったんだ・・・・。」


ーーーーーーーーー消ーーーーーーーー

ー忘れられない想いが有るとすれば
それは貴方にとって綺麗な物?

それとも残酷な物?

美しい恋の思い出でもいい
輝かしい栄光の足跡でもいい
温かい家族の絆でもいい
綺麗なら何でもいい・・・

だから交換した

何の価値も無い現実の想い出と
頭の中で作り上げた理想の想い出

それは逃げる為じゃなく
生きる為に

自分が壊れてしまわない為に

交換した・・・

一枚の扉を通し
入換えただけ

とても簡単で・・・とても脆くて・・・

すぐに壊れてしまったけど・・・

無理やり押込んだ本当の想い出が・・・記憶が
治まり切れなくて
戻りたいと勝手に騒いで
暴れ出して・・・

扉を壊して入って来た
戻って来てしまった

今度はもっと丈夫な扉を・・・と
また閉じ込める

だけどまた扉を破り戻って来る

その繰り返し・・・

どんなに捨てても戻って来てしまう
それが真実
本当の記憶・・・想い出・・・

生きる為に捨てているのに
何時の間にか逃げる為に捨てている

だから考えた

あぁ・・・扉だからいけないんだ・・・
扉は開いてしまうから
鍵を掛けても開いてしまうから

だから考えた

捨てるのではなく
全てを受け入れてしまえばいいと

だから扉を亡くした

そしたら・・・



死んでしまったよ

全てが・・・

貴方の想い出はきれい?
それは本物?ー

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周りの人は言いました。
「オズは完璧な子」
だと・・・

周りの人は何時も言いました。
「オズは美しい子」
だと・・・

オズは毎日綺麗にしました。
綺麗な洋服。
綺麗な髪。
綺麗な肌。
綺麗な飾り。

オズは毎日完璧でいました。
完璧な知識。
完璧な踊り。
完璧な歌。
完璧な姿。

周りの人は欲しがりました。
隣に置きがりました。
「オズと歩けば羨ましがる」
「オズと居れば自慢になる」
皆がオズを欲しがりました。

だからオズは完璧でいました。
皆の期待に答える為に・・・
皆を失望させない為に・・・

今日もオズは言われます。
「完璧で美しい」
と・・・

オズは一人の人に聞きました。
「どこがいいの?」
と・・・
その人は答えました。
「勿論美しい所」
と・・・
オズは別の人にも尋ねました。
「どこがいいの?」
と・・・
その人は答えました。
「当然美しい所」
と・・・
誰に聞いても同じ答え。

ある日オズは汚れた姿で皆の前に現れました。
誰もオズを見ませんでした。
誰もオズに興味を示しませんでした。

オズは知りました。
皆「姿は見ても心は見てはいなかった」のだと。

オズはまた綺麗な姿で現れました。
皆はオズに群がります。
オズに話掛けます。
オズを誘います。

「違う・・・」

「違う・・・僕は宝石じゃない・・・飾りじゃない・・・人形じゃ・・・ない・・・」

オズは気付きました。
人として見てくれてはいなかった事に。
心から必要と思ってくれてはいなかった事に。
誰も愛してくれてはいなかった事に・・・

オズは両目を潰しました。
綺麗な髪を切り落としました。
そして喉を潰しました。

美しかったオズ・・・
完璧だったオズ・・・

オズは世界を捨てました。
光の世界を捨てました。

一人ぼっちになったオズ。
だけど寂しくはありません。
小鳥の歌声を静かに聴けます。
風の優しさを沢山感じる事が出来ます。
花の香りに包まれて眠れます。

オズは初めて心から感じました。


「幸せだ・・・・」

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