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自己満足の詩集ブログです(=゜ω゜)ノ livedoorからのお引っ越しwww 基本ダークな詩が中心です(=゜ω゜)ノ たまに短編やら掌編やら小説も書きますm(__)m      最初に★入城案内★を読んでくれると嬉しいでつ(=゜ω゜)ノ
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小鳥 歌唄
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自宅警備員
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無関心
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詩を唄います。
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闇へとご案内致します。素敵な夢を見れるでしょう。
・・・多分ね。
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少年が語り続ける悲しい事実。
そして青年に襲いかかる忘れてしまった事実。
二人のノアの真実・・・。
全てを知った時、青年は泣き叫ぶ事も出来なかった。

青年は、俯いた少年に優しく話し掛けた。

「無理に・・・話さなくてもいいんだよ。悲しい出来事は早く忘れた方がいい・・・。」

そう言う青年に、少年は俯いたまま言う。

「そうだね・・・だからアンタは忘れたんだ。悲しみを全て僕に押し付けて・・・。」

「君に?」

不思議そうにする青年であった。
少年は俯いていた顔を上げ、思い出すかの様に話出す。

「パンドラは・・・歌がとても好きな子だった・・・。大人達が居なくなり、皆が悲しんでいる時も歌っていた。兵士達が襲って来た時も・・・歌ってい た・・・。皆パンドラの歌が好きだった。僕も・・・大好きだった・・・。だけど・・・パンドラの歌で・・・皆死んでしまった・・・。」

「歌で?・・・それは、教会に隠れていた時に?」

「そうだよ・・・。教会に隠れるようになってから、僕はパンドラに歌を歌わない様に言い聞かせた。歌声で教会の場所がバレてしまうかもしれないからね。パ ンドラも初めは理解して、歌うのを止めていた。でも・・・パンドラにとって・・・歌は涙の変わりだったんだ・・・。『笑顔が素敵な子』そう周りに言われ続 けてたせいかな?幼いながら・・・きっと思ったんだろうね・・・泣いちゃ駄目だって・・・。だからパンドラは・・・泣きたい時に涙ではなく、代りに歌を流 したんだ・・・。今思えば・・・パンドラが歌っていた時は、何時も誰かが泣いていた時の様な気がする・・・。」

「でも・・・僕がパンドラの涙を奪ってしまった・・・。」

青年がそう呟くと、少年は無言で頷いた。
そして少年はまた話し出す。

「歌う事で悲しみを表現していたのに、僕はパンドラから悲しみと言う感情を抑えつけてしまったんだ。抑え込まれた感情は、いつかは破裂してしまう。抑え続けたパンドラの悲しみが・・・破裂したんだ・・・僕の一言で・・・。」

「・・・一言・・・。」

「そう・・・たった一言だけど・・・パンドラにとってはとても重く・・・悲しい一言・・・。」

「何て・・・言ったの・・・?」

青年の問に答えること無く、少年は話続けた。

「満月の夜だった・・・。今みたいに、悲鳴の様な風の音が聞えていた・・・なぁ・・・。パンドラは・・・教会の前で・・・大声で歌った・・・。今まで我慢 していた涙が、滝の様に流れるかのように・・・溜まった悲しみを、まるで箱から全て出すかのように・・・大声で歌い続けたんだ・・・。その歌声で、兵士達 が教会に来た。」

少年は悲しそうに夜空を見上げた。青年も同じ様に、夜空を見上げ言う。

「教会にいた皆・・・殺されてしまったんだね・・・。」

少年の瞳から、一筋の涙が流れる。

「僕が皆を殺してしまった・・・。パンドラから涙を奪ったせいで・・・僕が・・・皆の命と・・・パンドラの全てを・・・奪ってしまったんだ・・・。」

涙する少年に、青年は優しく言った。

「君のせいじゃないよ・・・。悪いのは兵士達だ。仕方なかった事何だよ・・・。」

そう言う青年に、少年は涙を拭いながら言う。

「このオルゴールの中にはね・・・パンドラが居るんだ・・・。夜になるとこうしてオルゴールを開いて、パンドラを泣かせてあげてるんだ。我慢すること無く、思い切り泣ける様にね・・・。」

そして少年はオルゴールを見つめながら、微かに微笑んだ。

悲鳴の様な風の音が止み、パンドラの歌声がより大きく聴こえる。
とても悲しく・・・とても美しい歌声・・・。

「今・・・パンドラは泣いているんだね・・・。」

青年が呟くと、少年は頷く。
そして少年はオルゴールの蓋を閉め、青年にオルゴールを手渡した。

「・・・僕に?・・・どうして・・・。」

不思議そうに聞く青年に、少年は言った。

「探してたんでしょ?妹・・・。アンタの妹ならこの中だよ。」

そう言う少年に、青年は更に不思議そうに聞く。

「でも・・・その中の歌声は、君の妹のじゃ・・・。」

少年は頷いてからこう言った。

「僕の妹の歌声だ。だから渡す。アンタは妹を探しにこの町に戻って来ただけで、僕を探しに来たんじゃないんだろ?だったらこのオルゴールだけを待ち帰ればいい。」

ますます困惑する青年は、少年に更に聞く。

「君を探しに?君が言う事は・・・分からない事が多い・・・。何が言いたいんだ?」

青年の問に、少年は穏やかな口調で言った。

「なぁ・・・ノアよ・・・。アンタはさっき、悲しい出来事は早く忘れた方がいいって言ったね?だからアンタは忘れたんだよ・・・。『悲しい出来事』をね・・・。」

「・・・忘れた・・・?」

「あぁ・・・忘れたんだよ・・・。僕はアンタの『悲しい出来事』だよ。アンタがこの町を去る時に、置いて行ったね。だからアンタは覚えていないし、時間がずれてる。」

「何を・・・言って・・・。」

「兵士達に教会を襲われた時にね・・・一人だけ生き残った者がいたんだ・・・。運がいいのか悪いのか・・・その夜に限って眠れなくてね。誰かに呼ばれてい る気がして・・・教会の奥の森に居たんだ・・・。パンドラの歌声が聞えて、慌てて教会に戻ったけど・・・戻った時にはもう皆死んでた。一番最後に殺された のは・・・パンドラだったよ・・・。皆が殺され、死んで逝く様を・・・見せられたんだろうね・・・。あいつ等のやりそうな事だ・・・。」

大人の様な口調で言う少年に対し、青年の口調は子供のように脅えていた。

「・・・生き残ったのって・・・。」

「・・・ノアって男の子だよ。ちゃんと分かってるじゃん。」

「・・・ノア・・・僕が・・・生き残り・・・?」

「さあ、ノア。妹を・・・パンドラを連れて帰るがいい。」

少年ノアはそう言うと、立ち上がり教会の扉を指差した。
青年ノアは、愕然としているだけであった。

また悲鳴の様な風の音が聞こえ始めた時、愕然としていた青年ノアはゆっくしと立ち上がり、少年ノアに手を差し伸べる。

「君も・・・連れて帰る。」

差し伸べた手は微かに震えていた。それを見た少年ノアは呆れた顔をして言う。

「無理はするモノじゃ無いよ。せっかく忘れた『悲しい出来事』を思い出してしまう・・・。聞くのと見るのじゃ・・・全く違う。アンタは耐えられなかったから、僕を此処に残したんだよ・・・。」

「・・・でも・・・このままパンドラだけ連れて帰ったら、僕はきっと後悔をするだろうし、僕のせいで死んで行った者達の為にも覚えていなければならない。 きっと・・・忘れちゃいけなかったんだ・・・。僕の役目は・・・この町で起きた真実を伝える事なんだよ・・・それが、唯一生き残った僕の役目なんだ よ・・・きっと・・・。」

涙ながらに言う青年ノアに、少年ノアは優しく微笑んだ。

「君のせいじゃないって言った癖に・・・。今のアンタは耐えられるのかな?・・・でも・・・例え耐えられ無かったとしても・・・もう僕を捨てたら駄目だよ・・・。」

青年ノアは無言で頷いた。
少年ノアは・・・そっと・・・青年ノアの手を取った。
月と雲が重なると同時に、二人のノアも重なる。
離れた一部が・・・抜け落ちた記憶が埋る・・・。


夜も明け、太陽が顔を出し始める頃、教会の床に横たわっていた青年が目を覚ます。
目が開くと同時に、太陽の光が飛び込んで来た。

「・・・屋根・・・教会の屋根・・・無かったんだ・・・。」

まるで巨人が持って行ったかの様に、教会の屋根だけが綺麗に無くなっていた。

「そうか・・・あれからもう・・・十年も経つんだ・・・屋根ぐらい無くて当たり前か・・・。」

横たわるノアの瞳から涙が流れる。

「・・・ごめんな・・・パンドラ・・・。僕だけ生きていて・・・。僕だけ・・・大人になって・・・。」

ノアは空に向ってそう言うと、また目を閉じた。

「あの時・・・教会中に横たわる沢山の死体の中で・・・僕はパンドラの死体を抱きながら歌っていたんだ・・・あの子がよく歌っていた歌を・・・。たまたま 通り掛かった味方の兵隊が僕の歌声に気づき・・・僕はその兵隊に保護された・・・。パンドラの歌が皆を殺し・・・僕を助けたんだ・・・。」

閉じたままの目から、止めど無く涙が流れる。
涙を拭い起き上がったノアは、左手に握り締めていたオルゴールを見た。
するとオルゴールはただの古びた箱に・・・。
ノアはゆっくりと箱の蓋を開けた。
箱の中には小さな骨が一欠けら・・・入っていた。

「パンドラ・・・ただいま・・・。」

そう言うと、ノアは優しく微笑んだ。

此処に寂れた町が在る。
その町を生き返らせようとする青年が・・・此処に一人・・・。

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青年の目に映るのは少年。
少年が手に持つのはオルゴール。
オルゴールから聞えて来るのは少女の歌声。
それはとても普通で、とても不思議な光景だった。
青年にとっては、この上ない違和感が漂う後景・・・。

「君は・・・何時から此処にいるの?」

囁く様な小さな声で青年は少年に尋ねると、少年は表情一つ変えずに問に答えた。

「生まれた時から」

迷いの無い答え・・・。

青年はこの少年がどうやって今まで生き延びたのか、と言う疑問よりも、オルゴールの中の歌声の正体、そしてその歌声を手にしている少年の正体の方が、気になって仕方がなかった。

「その歌は、誰が歌っているの?」

青年はゆっくりと膝を床に付けながら問う。

「・・・妹・・・。」

そう答える少年に、青年は悲しそうに微笑んだ。

「そう・・・。君の妹が歌っていたんだ・・・。僕にもね、妹がいるんだ。髪は金色で腰まで長くて、瞳が青くて・・・歳は君より少し下かな・・・。君・・・見掛けなかったかな?」

青年がそう聞くと、少年は何も言わずにじっと青年の瞳を見つめ、しばらくするとそっとオルゴールの蓋を閉じた。
少女の歌声が止む・・・。

「知らないか・・・。」

自然と出た青年の声が、教会に響く。
教会の中には悲鳴の様な風の音だけが聞えて来る。

暗い教会の中には、青年と少年と・・・オルゴールが一つ・・・。
聞えて来るのは嫌な風の音だけ・・・。
何も話そうとしない少年に、青年は静かに尋ねた。

「君の妹・・・名前は何て言うの?」

少年もまた、静かに答える。

「・・・パンドラ・・・。」

名だけ呟いた少年に向かい、青年は嬉しそうに言った。

「パンドラ・・・そう。そう何だ。僕の妹と同じ名前だ。」

まるで運命の様な出会いを感じた青年は、更に嬉しそうに尋ねる。

「君は?君は何て言う名前なの?」

少年はまた、名だけ呟く。

「・・・ノア。」

「・・・ノ・・・ア・・・?」

少年の名を聞いた青年は、嬉しそうな顔から驚いた顔に変わる。

「君も・・・ノアって言う名前なの?」

戸惑いとも言える表情の青年に対し、少年は相変わらず表情を変えること無く言う。

「あんたもノアって言うんだ。同じ名前だね。・・・妹も・・・僕等も。」

醒めた様な口調でそう言うと、少年は再びオルゴールの蓋を開けた。
また・・・少女の歌声が教会中に響き渡る。

同じ名前の青年と少年。
そして同じ名前の二人の妹。
これは偶然か・・・運命か・・・又は違う何かなのか。
その真実は、青年には余にも残酷な物であった。
知らない方が幸せな時もある、そんな言葉を証明するかの様な・・・。

唖然とする青年を尻目に、少年は語り出した。

「この町がどうして『墓場の町』って言われてるか知ってる?皆は屍の様な人達が住んでるからって思ってるみたいだけど、本当は違うんだよ・・・。
本当は・・・此処が『本当に墓場』だからだよ。・・・子供達のね・・・。」

少年の話を認めてはいけない気がした青年は、口を挟む。

「それは・・・沢山の子供達が此処で死んでしまったのは、知ってるよ。・・・事実・・・だし・・・。でもっ本当の墓場は死体を納める所であって・・・。」

「アンタは忘れてしまったんだね・・・。」

「忘れた・・・って?」

少年の言う意味が全く分からない青年に、少年は更に語り始めた。

「昔話をしてあげるよ。・・・その昔、ある一つの町が在りました。その町はとても活気に溢れていました。しかし、国の反乱により戦が起き、度重なる戦で男は戦地へ・・・女は病院へと送られ、町のは子供達だけになってしまいました。」

「それは・・・この町の・・・。」

「黙って聞いて。」

少年の言葉に青年は従うしかない。

「残された子供達は、大人達が何時でも帰って来れるよう、田畑を耕し、家が壊れれば直し、町が錆びぬよう維持し続け、守り続けました。しかし、この町には 子供しか居ない事を知った死に損いの兵隊達が、何時からか食べ物を漁りに来るようになりました。子供達は田畑を耕すのを止め、兵隊達を町から遠ざけようと しましたが、兵隊達は田畑を耕すよう子供達に命じ、従わない者は皆の前で殺すようになりました。
ある夜、兵隊達が寝静まった後、子供達は持てるだけの食糧を手にし、少し離れた教会へと逃げ込みました。兵隊達に見付らぬよう、息を殺して・・・ヒッソリと教会で過し続けました。兵隊達がこの町を去るのを待ち・・・。」

そう言うと、少年は悲しそうに俯いた。
青年もまた、悲しそうに言う。

「僕等が戦っている間に・・・この町でそんなことが・・・。」

そんな青年の言葉に、少年は強い口調で言った。

「アンタは本当に忘れてしまったんだね。じゃあ、この後の事も忘れてしまったの?」

少年の問に、青年は戸惑うばかりだった。

「忘れて?さっきから、君が何を言っているのか・・・よく分らないよ・・・。僕は戦地に居たから、その後どうなったのかも分らないし・・・。」

そんな青年に、少年は更に問う。

「アンタは何時から戦地に居たの?」

「何時から?それは・・・あれ?・・・何時からだっけ・・・思い・・・出せない・・・。」

困惑する青年に、少年は更に問う。

「アンタはこの町に戻って来る間、何してたの?」

「何って・・・それは戦を・・・。」

「戦は何時終わったの?」

「・・・戦は・・・半年前に終わった・・・よ・・・。」

青年の答えに、少年はまた強い口調で言う。

「違う。戦は10年前に終わってる。」

「・・・10年前・・・?何を言って・・・。」

更に困惑する青年であったが、少年は気にする事無くまた語り出した。

「その後、子供達は逃げ出したと思い、日に日に兵隊の数は減って行ったが、何処かに隠れていると思った兵隊は、町中を探し始めた。しかし余所者の兵隊はこ の町の教会の場所を知らない。この町の教会は町から少し離れている上、回りは木々が覆っていた。大声を出さない限りは・・・教会の場所は見付らな い・・・。」

そしてまた・・・少年は悲しそうに俯いた・・・。

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此処に寂れた町が在る。
建物は壊れ、人々は去り、僅かに止まる者達は、まるで屍の様にただそこに居るだけ。
墓場の様な町から、『墓場の町』と呼ばれている。

元々はとても活気に溢れた町だった。
毎日飛交う商人達の声。
無邪気に走り回る子供達。
陽気に音を奏でる演奏者達。
そして少し離れた所に在る教会には、何時も沢山の人が足を運んでいた。

しかし、国の反乱と共に戦の数も増え、度重なる戦争の度に男達は戦地へ・・・。
女達は部隊地区の病院へと送られた。
町に残された子供達は、ただ大人達の帰りを待つことしか出来ず、町は日に日に壊れて行った・・・。

ようやく戦が終わり、生き残った者達が町へと帰るとそこには嘗て自分達が過していた町は無く・・・。
ただ壊れた家と・・・多くの子供の骨が有るだけだった・・・。

死んだ子供の側に居たいのか・・・壊れた町に止まる者もいれば、死んだ子供を忘れたいのか・・・町を捨て、別の地へと旅立つ者もいた。

こうして町は『墓場の町』となってしまった・・・・。


そんな町に何時からか、夜になると微かに歌が聞こえて来る様になっていた。
その歌声はとても優しく、とても悲しく、とても美しい少女の奏でる声。
町の人々はその歌声に気付いているのか、気付いていないのか・・・。
歌が聞え始めても、屍のままだった。

今夜も少女の歌声が響く。

♪零れ落ちる涙の下には白い羽根
神様からの贈り物
残酷な贈り物

ありがとう ありがとう

見上げてみた夜空の上には愛する人
天使に恋をした人々
禁断の恋をした

さようなら さようなら

置いてけぼりの私は何処へ行けばいいの?
ただアナタの帰りを待つ
また会えるよね 私達

アナタの笑顔なら此処に在るわ
鍵を掛けて逃げないように
離れれば離れる程強くなる
もう私の手は届かない

次にアナタに触れられるのは
神様が消えてからかな?

私なら此処にいるわ・・・♪


微かに聞える歌声が町に響く。
その歌声に、一人の青年は何時も耳を傾けていた。
涙を流しながら・・・。
ただ一人、歌を聴いて泣いていた。

「あぁ・・・今夜もまた聞える・・・。誰が歌っているんだろう?何処で歌っているんだろう?この美しく悲しい歌を・・・。」

青年は歌声の持ち主が誰なのかが、気になり始めていた。
戦争で両親を失った青年は、ただ一人この町に残した幼い妹を探す為、町へと戻って来た。
生きているか、死んでいるかも分らぬまま・・・。
そして死んでいる確率の方が高いと分かっていながらも、毎日毎日妹を捜し続けている。
消えそうな希望を信じて。
青年はこの歌を唄っているのは、もしや妹では・・・と思い始めていた。

夜が明けてまた夜が来る。
当たり前の現象なのに、青年はまた夜が訪れる事に安心感を覚えていた。

「よかった・・・今日もちゃんと夜が来た・・・。またあの歌が聴ける。」

夜にしか聞えない歌。
夜にだけ響く、少女の歌声。
青年は瓦礫の上に座り、そっと目を閉じ、耳を澄ました。
周りが寝静まり、悲鳴の様な風の音が聞え出した頃に、歌声は聞こえて来る。

♪零れ落ちる涙の下には白い羽根
神様からの贈り物
残酷な贈り物

ありがとう ありがとう

見上げてみた夜空の上には愛する人
天使に恋をした人々
禁断の恋をした

さようなら さようなら・・・♪

今宵もまた微かに聞えて来た、少女の歌声。
青年は始めは静かに歌を聴いていたが、しばらくすると立ち上がり、迷う事なく歩き出した。

「こっち・・・こっちだ。こっちから聞えて来る。」

青年は歌が聞えて来る方向を、耳を凝らして探していたのだ。
風の音を消し去り、歌声だけを集中して耳の中に入れる。
その内歌声が歩いて来る道が、聞えて来る。
青年はその道を辿り、歌声の元へと歩き続けた。

「歌声が大きくなって来た・・・。近い・・・。」

まるで何かに吸い込まれるかの様に、青年は少女の歌声を目指し歩き続けている。
少女の正体が妹ではないか、と言う期待を秘めて。

青年が辿り着いたのは、嘗て多くの人々が足を運んだ、町の少し離れた所に在る教会だった。
今は廃墟と化した教会・・・。

「此処から聞えて来る。この教会の中から・・・。妹と・・・家族皆で毎日行っていた・・・この教会から・・・。」

青年は、今にも壊れそうな教会のドアをゆっくりと開けた。
錆付いたドアは、鈍い音を立てながら開く。
中に入り、一歩一歩進む度にギシギシと音がする。
今にも底が抜けそうな床・・・。
腐りかけた椅子。
壊れた祭壇。
崩れ落ちた十字架・・・。
その十字架の下から、歌は聞えて来る。
青年は壊れた祭壇の前に立つと、そっと奥を覗いた。
そこには少女では無く、オルゴールを手にした少年が座っていた。
歌声は少年が持つオルゴールの中から聞えて来る。
まるでオルゴールが歌っているかの様に、とても滑らかに・・・。

「少・・・年・・・?」

青年は意外な歌声の持ち主に、驚く事も悲しむ事も出来ずにただ立ち竦むだけであった。

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