長い橋を渡り
その先に立っている者は
迎え人ではなく
別れを告げた幻影
蔓が伸びる橋は
か細い体を揺らし
心も揺さぶり
奈落の底へと落とそうとする
底からは手が伸びる
恋路に敗れた者達の
涙に溺れた者達の
「こっちへ来い」
と
「早う来い」
と
手を伸ばす
捨て切れず
諦めの付かぬ想いに
軋む橋を必死で渡る
まだ行かぬぞ、まだ逝かぬぞ
あの人は待っていてくれる
あの人は迎えに来てくれる
しがみ付く想い
噛み付く恋心
誰が哀れか
橋の下の亡者か
未練がましい己か
どちらも哀れで
どちらも阿呆だ
盲目になるのが恋なのだと
女は己に言い聞かす
そうして涙の底へと落ちて
溺れて沈んで泡となる
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